磁気の極性(磁気情報)で “1”と”0” を記憶する
“高速で高い耐久性を持った不揮発メモリ”
磁気抵抗効果
磁気抵抗効果を利用して ”1”と”0” を記憶
次世代メモリの概要
DRAM | NAND | 次世代 メモリ |
|
---|---|---|---|
速度 | ○ (20nsec) |
× (10usec) |
○ (< 100nsec) |
記憶 保持 |
× (〜ミリ秒) |
○ (数年) |
○ (数年) |
耐久性 | ○ (20nsec) |
× | ○ |
半導体・デジタル産業戦略(改訂案)@2023年6月の「次世代メモリの研究開発」@P162より抜粋
MRAMの優位性
MRAM (Magnetoresistive Random Access Memory) は、磁化の方向で情報を記憶する不揮発性メモリです。1ns程度の高速な磁化反転速度により高速動作が可能であるとともに、原子移動が無いために書き換え耐性が高く、他の不揮発性メモリには無い優位性を有しています。
MRAMの基本素子:MTJ
MRAM技術の近年の進歩は、2010年東北大学の大野教授のグループによる技術的ブレークスルーに始まります。当時デバイス性能の向上をめざして、絶縁体を挟む新たな材料が世界的に探索されていました。その中で、従来の材料を薄くしていくと、通常基板に水平な電子のスピン(磁気の向き)が、ある薄さで基板に垂直に揃えられることを発見しました。結果、その材料は世界標準の材料系となり、2018年から本格的な実用化が始まっています。
STT-MRAM
MRAMは書き込み方式によって特徴が異なります。最近広く使われ出したのが、STT (Spin Transfer Torque)-MRAMです。STT-MRAMの記憶素子は「磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunneling Junction)と呼ぶ3層構造の2端子素子を基本素子としています。3層構造は、磁化が特定の方向に固定されている「参照層(Reference Layer)」、電子がトンネル効果によって通過する「トンネル層(Tunneling Layer)」、磁化が参照層の磁化と平行な方向、あるいは反平行な方向どちらかの状態をとれる「自由層(Free Layer)」から構成されています。STT-MRAMでは、書き換えと読み出しを1つのトランジスタで実現することができ(1Tr1MTJ)、メモリセル面積を小さくすることが可能です。CPU内のキャッシュメモリと使われているSRAMやエンベデッド・フラッシュメモリの置き換えや、スタンドアロンメモリの事業が進められています。
SOT-MRAM
さらに次世代技術として期待されているのが、SOT (Spin Orbit Torque)-MRAMです。MTJ素子の自由層に接するように、非磁性純金属層のチャネル層が形成されています。書き換えと読み出しにそれぞれ専用トランジスタを必要とし(2Tr1MTJ)、STT-MRAMに比べてメモリセル面積は大きくなりますが、より高速な動作が可能で高い信頼性が実現できます。AIプロセッサに代表されるHPC(High Performance Computing)向けの高速キャッシュメモリの置き換えなどを視野に、研究開発が進めれています。
アーキテクチャ | STT-MRAM | SOT-MRAM |
---|---|---|
構造 | ||
書き込み方法 | Spin Transfer Torque (STT) | Spin Orbit Torque (SOT) |
用途 | 大容量 | 高速 |
STT-MRAM
- 構造
- 書き込み方法
- Spin Transfer Torque (STT)
- 用途
- 大容量
SOT-MRAM
- 構造
- 書き込み方法
- Spin Orbit Torque (SOT)
- 用途
- 高速